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小説 小はん殺し結城純一郎の演説 (25)

色彩が物質と人間の関係であるということは、同時に固有の場所をめぐる、共同
体と共同体の戦争も含めた交通関係その世界史的な場所と人間の営み、その空間の記録に
存在している。いったい地球を発見し、世界を制覇したヨーロッパ精神と文化形態、芸術
形態とは何か? 他者存在としてのヨーロッパとは、どういう遺伝子なのだろう?

 色彩とはある共同体と共同体の交通関係である。シルクロードとは色彩の道。すでに7
世紀唐帝国はビサンチン・東ローマ帝国と交通関係にあった。東ローマ帝国には多くのラ
クダが、遥か遠い中央アジアの砂漠に想いをよせて、たっていた。かつて誇れる冒険者と
しての商人達が命がけで切り開いた通商ルートこそ、芸術生成の表層空間である。一時期
深層にある思い入れをもって、表層空間を侮蔑する人々が存在しましたが、表層こそ思考
すべきテキスト存在である。

 古代は私たちにとって、他者としての表層空間。他者と表層。他者とは自己同一生活と、
おのれの深層にレイプされてしまった国家神学体系から、異質な者として排斥されてしま
う存在であり、すでにメデイア・レイプとして、制度化されている日本的市民社会のサブ
・テキスト形態からは理解できぬ人間とその空間を、他者と呼ぶ。

 さらに表層とは、人間関係が激突する、矛盾と矛盾が衝突し、そこで人間は打倒され、
傷ついてしまう場所としての空間。その場所こそまさに人間の現場。日本システムの批評
装置は、ほぼ壊滅しつつある。それは場所性の喪失。表現者がテキスト存在として表出す
る世界を受けとめることができず、対話・対決するベクトルなき、消費の純愛はすでに、
新生活・新感性・おいしい知の戦略なるものが、壮大なゼロとして内部から否定されてい
るのが現在。まさに気分に過ぎなかった芸術のステーテスの構造は形骸化されてしまった。
夢の残骸として残ったのは、身体のむくろたる骸骨。

 他者としてのヨーロッパ。近代民族国家の枠組みを創造的破壊するパワーは、やはりヨ
ーロッパの古代基層に存在する。何故、西ローマ帝国を滅ぼした彼らは、その帝国文化を
破壊しキリスト教のみを継承したのか?

 その理由は明解。キリストはローマ軍に精神的レジスタンスとして抗拒し、孤立無縁で
処刑された勇気ある英雄として、ローマ帝国の植民地であったヨーロッパの戦闘精神は受
け入れた。キリストはまさにローマ軍による植民地政策、その腐敗がもたらした精神構造
に、たったひとりの倫理革命者として、立ち向かって行った。キリストは新しい人間像、
あるべき正義にみちた共同体倫理をテキスト存在として、ローマ軍の植民地政策その圧制
と抑圧に苦しんでいた民衆に指し示して行った。

 ヨーロッパもまた蛮族と帝国から呼ばれ、蛮族がすむ場所と呼ばれ、長期に渡りローマ
軍に支配されてきた。なんとかこの支配から解放されたいと、ローマ帝国軍と闘争してき
た。植民地収奪によって成立しているローマ帝国文化は彼らにとって、軽蔑すべき腐敗形
態だった。ヨーロッパが西ローマ帝国を滅ぼしたとき、すべてを破壊したのは正当な理由
があった。キリスト教は、ヨーロッパの試練を根源的にささえる心的エネルギーとして生
成した。ヨーロッパ芸術とキリスト教は切り離すことなど、できないばかりでなく、根源
的な関係である。

 和辻哲朗「風土」よると、ヨーロッパの土地は改良しやすかった。それゆえ彼らは自然
の脅威を恐れることなく、世界の土地をわがものにできると考え、世界を植民地にするこ
とができた、こう説明しているが、まったくその逆なのだ。原始ヨーロッパの土地は氷河
期によって規定され、石ころの土地だった。それゆえにヨーロッパ精神の基層たる石工の
色彩トーンは誕生した。埋まっている膨大な石ころを取り除きながら、ヨーロッパ民衆は
土地を、気がながくなる時間をかけて改良して行った。深層とはまさにこうした表層空間
の格闘の上に蓄積されて行く。

 和辻哲朗「風土」はただ日本的精神風土に光景を回収した。それは他者を理解すること
ではなく、おのれのアトミズムに盆栽のごとく生成させたのかもしれない。しかしもはや
日本的回収形態そのサブ・テキスト生成に、終わりがきたことはまちがいない。キリスト
教・ヨーロッパ・アメリカは、いつまでもすべてのテキストを隠す日本マフイア政治経済
システムの、膨大な黒字構造を見過ごしたままにしてはおかない。システムにテキスト存
在としてのポリシーと理念が崩壊していれば、システムはおのずから死滅していく。

 仮想現実の色彩。それが突然としてわれわれの生活空間に飛び込んできたのは、一九九
二年一月十七日。いうまでもなく湾岸戦争のUSA軍が全世界を衝撃に陥れたバグダット
空爆。

 いったい仮想現実の色彩とは、はたしてなんだろう? 黒い闇にイミテーションのごと
く表出した、あのバクダット空爆の色彩、その青緑色こそ、メディア・レイプ、あるいは
身体知覚のボーダレスとしての、仮想現実の色彩である。それは同時に人類がいまだ森林
の樹木の上で、蛇や,は虫類に脅かされながら生活していた人類誕生以前の色彩知覚を、
仮想現実は呼び起こす。人類の始源的な遺伝子を呼出し、こうして最後の人間は、これま
での人間というフレームを、仮想現実が眠っていた遺伝子を現在に呼び出したことにより、
解体されていく。それはまさに不気味な渦を巻く青緑色の沼である。

 最後の人間が夜間透視機器をつけて不気味に笑っている、映像は黒い闇に浮かび上がる
青緑色の光景。映画「羊たちの沈黙」の基調色は、バクダット空爆と十万人のイラク兵士
を埋め殺した陸上戦の基調色と連結・連動していた。こうしてUSA新大統領クリントン
戦略の基調色たる青緑色が、いかなる現代世界を生成させるのかを、予測することは可能
となる。
 それはおそらく、レーガン・ブッシュと続いた共和党戦略よりも、現代世界を挑発と不
安・動乱にたたき込むことは間違いない。ケネディはベトナム戦争とキューバ革命によっ
て泥沼にはまり込んだ、USA内部のクーデターによって暗殺された。クリントン戦略が
その二の舞を踏むとは思いませんが、USAの強力な支配圏にある中南米と南アメリカの
動的中心は、古代の遺伝子が覚醒しあらたなる創造的混沌へと移動する。そのときクリン
トン戦略は世界との共存を選択するより、USA第一主義を唱えることは間違いない。

 世界同時基調色の青緑色とは、冬の澄んだ青空ではなく、沼であり海の不気味な色。さ
らに仮想現実システムとは、やっかいな人間を忘れさせてくれる快楽の構造にあり、不均
衡・不安定の表層空間によって生成する。それは人間のアトミズムとナルシズムをくすぐ
るが、通貨のように、わが手のぬくもりからすぐ離れて行く。われわれが日常使用してい
る通貨こそ、仮想現実のもっとも典型的な形態である。その紙っぺらはただ、あるシステ
ムの神話によってのみ維持されているにすぎない。国家通貨の色彩とは、われわれの深層
に埋め込まれた仮想現実なのだ。ゆえに仮想現実は数字言語によって人間を取り込み呪縛
する。数字言語は人間を経済動物として生成する。世界的同時基調色とは仮想現実であり
最後の人間が仮想現実の色彩から動物として登場する。映像と表層には額に数字を埋め込
めれた怪物が雄叫びをあげている。最後の人間こそは映像と表層に現出する。映像よりの
色彩と音は人間のバランス感覚を管理コントロールできる。

 こうして最後の人間は民衆を目潰しにして感覚を支配する。世界を不安定と不均衡にし
てこそ民衆はバランス感覚を求めマスメディアに貫通されたメディア人間へと変貌する。
おのれの感覚を媒体に委託した身体である。こうして民衆は無力化される。もはや民衆の
現実感覚は映像と表層において培養されている。これも最後の人間身体である。最後の人
間が最後の人間によって培養される仮想現実こそ映像と表層最後の人間の概念である。こ
こから逃亡できる人間は絶望する人間のみである。階級と階層は固定化され下層はひたす
ら仮想現実感覚の夢のドームに飼育され、そこに躍動的な身体感覚はすでに剥奪されてい
る。躍動的な現実は自己実現能力を展開できる上層身体のみである。ここにおける階級闘
争とはイデオロギー闘争ではなく身体感覚をめぐる闘争となり、現実感覚をめぐる闘争と
なる。

 最後の人間によって金融工学的に捏造された世界から脱出できるのは、絶望する人間と
逃亡者のみの個人である。世界帝国による仮想現実とそこから逃亡する身体感覚をめぐる
個人の攻防こそが映像と表層、最後の人間による情報戦となる。その情報戦とは身体感覚
による仮想現実と現実をめぐる攻防環境にあり、やがて現実は仮想現実によって操作され
ていくだろう。現代世界は茶褐色と青緑色の沼である。青緑色の仮想現実と茶褐色の現実。
下層と仮想の連関。もはや下層に解放区は存在できるのだろうか?
by gumintou | 2006-09-09 05:56 | 小はん殺し結城純一郎


混沌から


by gumintou

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